毎週土曜日更新を心がけておりますが、遅れる場合もございます

2006年09月30日

5

それからしばらくして阿守は私の家に遊びにくるようになった。
遊びにくるというのはいいわけで、私に金をせびりにくるのだった。
「平尾くん、ちょっと都合してくれないか。悪い友人にひっかかってしまってねぇ」
などといいつつ、その日も私の手から金を受け取り、照れた笑を浮かべていたが、不意に真顔になって私に言った。
「平尾くん、僕と一緒にバンドをやろう。なにかおもしろい、バンドをやろう。誰も知らないような音楽をやっていれば、嫌なことなんかすぐに忘れてしまえるだろう。のんびりやろう。あまり金にはならないかもしれないが、音楽で生きる、ということは、そういうことなんだなあ」
ニヒリストの私に、それを断る理由はなかった。

阿守とのバンドのことを書く前に、私はあの男との出会いを書かねばなるまい。

高2の秋。
修学旅行の季節だ。
私はその修学旅行を前に、友人の家で前夜祭らしきことをするというので、そこに行った。
その友人もバンドをやっていたので、自然とバンドマンの比率が高かった。
ズッサンもいたし、高校は違えど阿守もいたのは、その友人が阿守と同じ中学だったらだ。

その友人宅で、1人ギターを弾いている男がいた。
その男は、2台のラジカセを手元に置き、オーケストラの総譜とにらみ合いながら、ギターを弾いていた。
「なにをしているのだい?」
そう声をかけたのは阿守だった。
どうやら阿守と知り合いらしかった。
そう問われて、その男は中途半端に長い頭髪を無造作にかきあげ、酔眼をこちらに向けた。
昨年の春、高校の同じフロアで見かけたあの男だった。
「『新世界より』をギターでどんだけ重ねれるか試っしょんじゃが」(『新世界より』をギターでどれだけ重ねられるか試しているのだよ)
そう答えると、男は再び視線を総譜に戻し、ギターを弾き始めた。
2台のラジカセを擬似MTRにし、ギターを延々重ねているらしい。
これが真鍋だった。

参考文献:いくじなし/大槻ケンヂ(筋肉少女帯)
【関連する記事】
posted by ニヒリストHILAO at 16:21| Comment(0) | 死国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。