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2006年11月18日

11

私は結局、1人で大阪の音楽学校に入校した。
学費を支払っていたので、行かないわけにはいかなかった。
当時、私の通っていた学校のクラフト科に、ある講師がいた。
後年、その講師と私は出会うことになるのだが、それはまだ先の話だ。

1年間はまじめに通ったが、結局2年目はほとんど通わなかった。
今にして思えばこの1年間の学校生活は、私にとって大きな財産になっているが、当時の私は音楽家になるということを半ばあきらめていたので、無為に時間を過ごしているという感覚が強かった。
皆が皆、それぞれの道を歩み始めたというのに、自分ひとり音楽の道に固執するのもアホらしいではないか。

それなら私にだってなりたいものがある。
仙人だ。
崑崙のどこかにある仙境で、のんびり暮らす。
老いや死を超越し、千年単位で世界を眺めて暮らす。
なんと幸福なことか。
私はその夢想を現実のものとするために、2年目はろくに学校にも行かず、バイトに明け暮れたのだった。

そんなある日、ズッサンから阿守の店が潰れたと聞いた。
客の外国人と、地元のヤクザが乱闘騒ぎを起こしてしまい、それが元で潰れたのだという。
それ以降、阿守は行方不明だという。

そんなことはどうでもよかった。
金を貯めて中国に渡り、仙境を目指して崑崙に入る。
そのことで、私の頭は一杯だった。


結局、1年かけて渡航費を貯めた。
誰にも別れを告げることなく、下界を離れるため私は空港を訪れた。

―死国編 終―
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posted by ニヒリストHILAO at 10:34| Comment(0) | 死国編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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